書の紙 ー成田山書道美術館所蔵作品を中心に-

 「漉く、染める、引く、摺る、撒く、散らす、描く、継ぐ、磨く、打つ」これらはすべて紙を加工するときに使われる言葉で、書の紙にはこうした様々な技法が込められています。紙を染料に浸けたり刷毛で引いたり、漉く段階で着色したりする染紙や版木を用いて文様を摺り出す唐紙、箔を撒いたり継ぎ合わせたり下絵を描いたりする様々な装飾、さらに滲みを止め、紙を平滑にする打紙などの加工方法があります。どれも紙を美しく書きやすくするための加工で、多くはこれらの技法を複合的に用いています。
 こうした加工、装飾は、文房具としての使いやすさや紙単体での美しさだけでなく、書の表現とも密接に関わっています。例えば、晩年の杉岡華邨の大字作品は自然な色合いの加工紙を滲み止めを施さない真っ白な素紙に替えることで、墨の潤渇やコントラストが際立つ、余白の白で魅せる作風へと大きく変わっていきました。
 本展ではこうした紙の加工と装飾に注目し、無地の紙から装飾を凝らした平安の古筆まで、多様な書作品の紙に注目しご紹介します。書の紙がどのように表現と関係しているのか、確認しながらご鑑賞いただけると幸いです。

開催場所:奈良市杉岡華邨書道美術館

開催期間

2026年 5月23日(土)~7月20日(月・祝)